古典文学朗読劇-源氏物語編-第一章~第三章

FEEL

去年の今頃にYouTube上で公開された朗読劇(おそらく無観客の舞台を撮影したもの)をブクマしてあって(健児さんが光源氏役だったので)、昨夜22時に床に入ったものの、「さすがに寝るの早すぎない?」と思って、急に気が向いて第一章と第三章を観ました(※健児さんは第二章に出ていない)。
第三章での女性陣の演技がとても好ましかったので、本日、第二章も視聴。面白かったです。
軽く感想を残しておきます。

第一章~源氏を愛した男達~

第一章は男性陣だけの朗読劇。源氏物語に関してはいろいろなところで話題に出ますし、『あさきゆめみし』も読んでいるんだけど、私の中に正確な知識はありません。
ここでは、「頭中将(立花慎之介さん)が光源氏に恋をしていた」という解釈で話が展開します。公式なのかはわからん。
観ながら「好きなのかな?」と思ってはいたけど本当にそうだったのか、って最後なった。
ただし、想いが報われることはありません。頭中将は結局、気持ちを口にしもしませんでした。

若い光源氏がメインで、未熟さが際立つイメージでした。節操なしに平然と女性を渡り歩く感じではなく、無垢というか。カリスマ性はあまり感じられなかった。出そうとしてなかったのかもしれないけど。私としては物足りなかった。

光源氏に仕えている惟光さんが好きだったな。有能で苦労性でやわらかな物腰で。
脇の声優さんたちも上手でした。

第二章~源氏を愛した女達~

第二章は女性陣のみ。とてもよかった。光源氏いなくても成立するじゃん源氏物語。という発見があった。
要するに、光源氏に翻弄される女性の心のうつろいこそが源氏物語の肝なのだな。
愛し方がそれぞれの女性で違うところがうまく表現されていて、声優さんの演技も見事だった。

ちなみに、第二章を観ようと思った直接のきっかけは第三章における紫の上の演技です。演者は津田美波さんという方。
第三章で大きくクローズアップされるからか、第二章では控えめでした。
印象的だったのは下記の女性たち。

六条御息所

この方は、源氏物語に始めて触れる人がみんな「ひえぇぇぇ」ってなる存在なんじゃないかなって思います。
嫉妬深く、生き霊となって夕顔と葵上を死に至らしめた人。

実際のところ、生き霊が生きている人間を殺すのってかなり難しいらしいので(生きている人間が最強)、夕顔や葵上も弱体化していたんだろうなぁって思うんだけど、そういう感じはあまりなかったな?? 葵上は出産直後で弱ってたからかな。まぁ、物語だからそのへんは言っても仕方ないか。

冷静に自分を抑え込もうとする顕在意識と、光源氏の寵愛を受ける女性たちが憎くて仕方ない潜在意識が演技によってうまく表現されていたように思います。声優さんは恒松あゆみさん。
生き霊として暴れるところの迫力もすごかった。

六条御息所さんは、自分の嫉妬心や執着を、もっとしっかり自覚して、消そうとせずに抱きしめてあげたらよかったんじゃないかなと思います。押し込めるから膨らんで体に入りきらず飛び出していっちゃったんでは?

朧月夜

恋を楽しむ系女子。光源氏との恋を選ぶのはスリルが欲しいからなのだというスタンスがけっこう好きだった。こういう女子がいてもいいよね。
最後まで恋を楽しむ系女子でいてほしかったけど、最後は結婚できる機会を逃したことを後悔していた。
「楽しかったからまぁいっか。元気でね」でいいじゃん、と思った私。

夕顔

すんごいかわいらしい人なんだと第一章で思ってたもんだから、「し、したたかやんけ……」と驚いた。
「たまに会ってもたまに会ったふうにせず」と光源氏にも頭中将にも言われてたけど、それが計算でした~って話。面白い。執着を見せたら男って逃げていくのよぷぷぷって六条御息所を嗤ってたの怖かったな。
まぁでも、男性は騙されたって幸せだろうし、いいんじゃないでしょうか。

明石の君

なんか私この人好きなの。落ち着いていて、自然体な感じがするというか。
気持ちに抗わず、気持ちを偽らず、無理やりポジティブにもならず、明石の海の波に自分をたゆたわせているというか。
目の前にある幸福を受け入れ、それで満足し、豊かな心で生きている。
女性陣の中で一番幸福なのはこの人じゃなかろうか。

第三章~源氏と紫の上~

第18帖の松風あたりからの話(もちろんWikiで確認した情報だ)。
源氏と紫の上というより、紫の上の話だった。
津田さんの演技がとても美しく、胸を打ちました。

特に死に際に「こんなにも愛し苦しんだけれど、来世でまた巡り合いたい」という意味の言葉を吐くところがたまらなくよかった。涙出ました。
私に伝わってきたのは「振り返れば、身を切る苦しみも含めて、光源氏を愛せたことは自分の喜びでしかなかった」という気持ちだったんだよね。人として生まれ、狂おしいほどに誰かを愛せたことを尊ぶ心。
幼い頃より自分を通して藤壺を見られながら、いいように教育されて、妻にさせられて、いい女を演じて、でも子どもはできずという生活に、私は「つらいよね」という感想をもって同情していたんだけどね。
最期のこの台詞の部分で「あ~、幸せだったんだね」って思いなおしました。この人、ちゃんと生き切ったんだわって感じたんです。

私にとっての幸せは「自分の心に従って生きること」なんですが、そこには「我慢しない」が含まれます。要するに、紫の上みたいに光源氏に言いたいことがあるのに言わない、みたいなんはしないと決めています。
だから彼女を不幸なんじゃないかと感じていたけど、そうじゃないんだなぁ。こういう幸せもあるのかって、幸せってやはり人それぞれなんだなって、津田さんの演技で思いました。私は選ばないけど。

あと、この章での明石の君もよかった。紫の上との対面の部分とか、やっぱり「目の前のことを受け入れる」と言う姿勢なんだよね。

とまぁ、この程度でしょうか。
和歌が随所で読まれて、そのときには舞台上の垂れ幕に言葉が映されるのですが、もう少し長く残しておいてほしかったなぁという気持ち。解説が入るときにはそれが終わるくらいまで出しといてくれたらよかったのに。あと文字が草書? っぽくて読みにくかったので、風情も大事だけど読みやすい字体にしてほしかったような気も。とはいえ雰囲気を出すための演出だったのであれば、読めなくてもよかったのかな。

おそらくコロナ禍で、無観客にせざるを得なかった舞台だったのだと思うのですが、埋もれてしまっているのがもったいない。
今も無料で公開しているので、せめて出演声優さんや源氏物語に興味がある方の目にとまるといいなと思います。

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