レ・ミゼラブル

FEEL

2012/イギリス・アメリカ合衆国/監督:トム・フーバー/主演:ヒュー・ジャックマン

前に普通の映画のレミゼは観たんだけど……と書くために調べたら、何回も映画化されてるんですけど。それだけ長い間、“今”を生きる人の心に響き続けてきた作品なんだね。私が以前に観たのは1998年のやつかな。

ミュージカル版は舞台でも観ておらず、初めてでした! 曲は有名なので、何度かちらちらと耳にしたことがあったと思う。
今回はちょっと事情があって、ミュージカル版を観る運びとなりました。面白かったというか、胸は打たれました。

最初、ジャベールの役者さんに気を取られすぎました。「絶対に知っているのに誰だか思い出せない」とずっと考えてしまって。ラッセル・クロウさんだった。急にポンッと浮かんできてスッキリ。
そして、ジャン・バルジャンがヒュー・ジャックマンさんだったと、↑の主演書くときに初めて知るっていう。ヒュー・ジャックマンさんっていろんな人が「好きな俳優さん」として挙げるので、名前だけ頭の中にありまして、あ、あの人だったのか、と認識。

それはそれとして、お話は、フランス革命後のたいへんな時期のフランス。原作もフランス語で書かれたフランスの歴史小説なのに、イギリスとアメリカで映画化されるっていうのがすごいなって思う。ちなみに原作(日本語翻訳)は、小学生の頃、読もうと思って図書室から借りたけど、ろくに読まずに返したような記憶があります。今読むのも面白いかもしれないね。

とにかくもう民衆の暮らしが絶望的で、まだ生きる希望にあふれた若者たちが命を懸けて世の中をひっくり返そうとします。もう諦めた大人たちは、“美しさ”を捨てて生きのびるために他人を犠牲にする。
この世界にもし自分が生きていたとしたなら、どの生き方を選ぶだろう。どんな生き方ができるだろう。いろんなことに気づいていけるだろうか。とても考えさせられます。

ジャン・バルジャン

ジャン・バルジャンは小さな窃盗罪によって苦しみの人生を送るけど、その“小さな窃盗”を起こさせたのは何なのか? と考えると問題の根は深いです。
彼は司教様にあふれる愛を注がれて、改心し、その後も何度も誘惑に揺れながらも、“美しく”生きることを貫きます。

この、誘惑に揺れる姿も美しい。身バレしそうになったときに、「出頭すれば自分についてきてくれている者たちが破滅」「黙っていれば(他人を犠牲にして生きのびることになるため)地獄」という究極の選択の中、出頭を選ぶ(周りが信じないという結果になる)。大切なコゼットをマリウスに取られたくないという気持ちが湧いてくるけど、結局は彼の安全を祈り、命がけで助ける。

マリウスに「bring him home」と祈りの歌をささげていたときはグッと来たな。
もう、自分の心を汚す選択はできないんだよね。でも、誘惑を感じることからも逃げないというか、そこも受け入れているから本当にきれい。これがたぶん、万人の胸を打つ。きっと本当は誰もがこうやって生きたいはずだから。

ジャベール

ジャベールはものすごく固い信念でガチガチに自分を固めていて、勧善懲悪を地で行く人。
1998年版(過去の日記調べたらこれだった。マリウスがストーカーで怖かったとしか言ってなかった。ワロタ)の映画を観たとき、ジャベールが最後なんで死んだのかようわからんかったんだけど、今はわかるよ。

ジャベールは、心じゃなくて頭で生きている。ずっとそうやって生きてきた。「悪は罰するべき」「正義は何があっても貫くべき」って。潔癖であることが彼のアイデンティティだった。
だから悪(罰するべき対象)に命を助けられる(正義)という矛盾に心が動いたとき、戸惑ってしまう。ずっと信じ続けてきたアイデンティティが揺らいで、自分ではなくなってしまう気がしたと思う。本当は信念自体を上書きすればいいだけなんだけど、それができない生き方をしてきたんだろうな。だから、自分ではなくなる=死なので、実際にも死んでしまう。悲しいね。

ガブローシュに勲章を渡していたところから見ても、彼がもし自分と向き合って、新たな自分を受け入れられていたら、いい警察官になったんじゃないかと思う。
でも、真っ向から向き合うには、これまで自分の弱い部分から目をそらしすぎていたんだと思います。

若者たち

革命に身を投じた若者たちは、みんな生き切ってたなぁという印象です。若くして死ぬことは本当に悲しいけど、やりたいことはやったんだろうなと思う。本人たちは信念に殉じていた印象。本当はやりたくないのにやっていた人もいただろうけど……少なくとも映画で描かれていた人たちはみんな……そうだね、この人たちもジャベールと一緒で「これが自分です」という感じで死んでいった。

中でも、エポニーヌにとガブローシュに心動かされました。

エポニーヌ

コゼットがお嬢様然としてキラキラして描かれているのと見事な対になっていた。昔は逆だったんだろうけどね。両親からの愛は幼い頃は受けていたのかもしれないけど、成長してからはまったくなかった印象。彼女も好きな人への想い、報われたい気持ち、嫉妬の中で揺れ動きながらも、最終的にとても美しい生き方を選ぶ人。

『On My Own』響きました。ちょっと泣いた。
実はこの曲を勉強していて、その一環で映画を観たんだけども、曲だけのときは、相手とはもともと付き合っていたんだと思っていた。でもそうじゃなくて、まったく報われていなかった。一度も触れたことのない相手だった。そうだったのか。それなのに最終的に純粋な愛を貫いて、コゼットからの手紙だって渡して、好きな人を身を挺してかばって死ぬ。

最期は愛する人の腕の中で、幸せだったと思うけど……やりきれない気持ちもあります。
あの両親に育てられて、あそこまで美しくいられる彼女なら、もっといい男と出会えたと思うの。あのまま生き続けていさえすれば。まぁ……あの猛攻の中を生きのびられたとは思えないんだけども。そうすると、やっぱりああやって死ぬのが一番彼女にとってはよかったのかな。

両親が、彼女の死に何も感じていなそうなのがまた、時代なのかな、なんなのかな、切ないね。

ガブローシュ

名前覚えていないからWiki見にいって初めて、彼もテナルディエ家(覚書:コゼットが預けられていた宿屋の一家)の息子だと知る。なんだとー! 彼はまったく愛情受けてないってことなんですね……いない子として扱われているのですね。

小さな体で頑張っている子、ホント無理。苦しい。
ジャベールの正体にもしっかり気づく有能さ。普段から人を見ていないと(周りをうかがっていないと)できない。
大人に甘えていいはずの子が、なんで大人を勇気づけてるの(もう絶望的ってときに、去りたいやつは去っていいって言われたとき、真っ先に歌い出す)、無理。もっと甘えて。

救いは、彼が死に瀕したとき、本当にしんどそうにしていた若者がいたこと。
ジャベールの心にも一石投じたしね。死んでもなお、誰かに影響を与えられるのが人間の尊いところです。

1998年の映画では、この子、ハラハラしちゃって見ていられなかった気がする。最後のところとか「バカなことすんなー!」って思ってた記憶がある。でも今回は、ちゃんと好きになれたな。

マリウスとコゼット

ちょうどうでもよかった……
革命前夜にマリウスが恋の話をし出したとき、「正気? いや、正気じゃないからこうなんだな」って思いながら聞いていました。が。

私は同時に猫物語を思い出して、恋のストレスが人生のストレスを上回ったっていいんだよなってことに気づく。私の中の偏見に気づく。

ただ、このマリウスはストーカー感はなく、好青年だったので好感もてました。コゼットも、可憐でかわいかった。存在感は薄かったけども。

あと、いつも思うことなんだけど、秘密抱えているやつ(ジャン・バルジャン)はもうちょっと説明してやれな……「話してあげたいけど、自分の過去を話すと悲しませることになるからできない」くらい言ってあげてほしいわ。

テナルディエ夫妻

強烈な印象を残しましたね。

好きではないけれど、彼らは彼らで、生きるために必死だった代表。美しさを捨てて、生き延びることに特化した代表です。
これも時代の産物で、彼らだけを責めることなんて絶対にできないんですよ。
ジャン・バルジャンだって、あのタイミングで司祭と出会ってなかったら目覚めてないもの。

そして彼らの人生は物語のあとも続くから、どこかで目覚める日も来るかもしれない。
何も思わず、死んでいくかもしれない。
そのどちらもありうるのが人間で、気づかなければ悩まなくて済んだりもする。

「どう生きたいのか」を自問自答した人だけが、悩み、苦しみ、でもその先に到達できるのですね。

映像について

冒頭の船を引く囚人たちの姿、圧巻でした。すごかった。こういうのを再現できる現代技術(もう10年前だね……)に惚れ惚れしちゃう。行くことも見ることもできない世界を、画面の中だけでも体感させてくれるの、本当にありがたいなぁ。

ジャン・バルジャンの工場で、制服を脱いだらファンティーヌだけピンクのドレスだったのも面白かった。こういう視覚での特別感も面白いですね。

あとラスト、ジャン・バルジャンがたどり着いた、先に亡くなった人たちが築きあげた大きなバリケード? もか~。

個人的には下水の描写がすごかったなと。汚く見えるだけの汚くない水だと思うけど、「これ耳に入ったらどうやって清めればいいんだろう……」とかけっこう真剣に考えちゃったな。

ミュージカルが好き

1998年の映画にはほとんど感想なかったのに、ミュージカルになっただけでこんな書けるの!? と私自身が驚いています。
まぁ、観たタイミングもあるのかもしれないんだけど、音楽のおかげで飽きずにのめりこんで観ることができました。

随所で同じメロディーが使われているのも印象的だった。『On My Own』でも使われているフレーズも、本当に美しいよね。ジャン・バルジャンが召されるときも、このフレーズのおかげでホロッときた。

心はけっこう重くなる作品だけど、このミュージカル(舞台)のほうがなぜあんなに人気なのかはわかった気がする。機会があったら舞台も観に行ってみたいな。

コメント